幼稚園ブログ

気持ちに寄り添えば、自分から動き出す

2020年6月8日 18時06分

先日から、入園したばかりの3歳児は、園に慣れるのに、それぞれのペースが
あることをお伝えしています。
今日は、ある子の30分ほどの様子を通してそのことを再度お知らせします。

この子は、大泣きしながらお父さんに抱かれて登園してきました。
何と、今朝お兄ちゃんになったのだそうです。おめでとうございます!
うれしいことだけれど、お家の中は今朝は大変な状態だったでしょう。
朝ごはんは、きっとおばあちゃんが作ってくれたのでしょう。
ただでさえ幼稚園に行くのは、ちょっと勇気がいるときなのに、
お家の状況がいつもとは全く違うのですから、不安な気持ちがあって
お父さんと離れたくないのは当たり前です。

無理やり引き離すことはせず、泣き止むまでお父さんにいてもらいました。
他の子が部屋に入ったところで、私がそばに行くとまだお父さんにぐっと
しがみつく様子で、まだ不安な様子でした。
畑にカエルがいるからとお父さんと一緒に見に行きました。


こんなとき、青南幼稚園には子どもたちの気持ちを紛らわしてくれる
豊かな自然がたくさんあって、本当に助かります。
しばらく、カエルやミカンの木についていたアオムシや卵を見た後、
だいぶ落ち着いてきたところで、そろそろお父さんから預かろうと思いました。
お父さんから離すときに、私が抱くと泣きましたが、そこでお父さんには
お帰りいただきました。
後でちゃんと迎えに来るからねと、穏やかに言って帰ってくれた
お父さんに感謝です。ファインプレーでした。

泣きながら「抱っこは嫌だ」と言うので、下に降ろすと、それ以上
泣いたり暴れることもなく、ウッドデッキに座り込んだので、
しばらく一緒に横に座って、年長の砂場での遊びの様子を一緒に眺めました。

こんなときに、私は何かを求めることはしません。
ただ、隣に座って同じものを見るだけです。
年長さんあんなに大きな山を作っているよ、すごいね。
などとつぶやきながら、一緒にいてあげるだけなのです。


少し落ち着いたところで、近くにあったカタバミの種を摘んで、
触ると飛ぶところを手元で見せてみました。
触るとプチッと弾けて、小さな種が中から飛び出すのです。


不思議な感触と小さな種が飛ぶことに興味をもってくれたようだったので、
プランターのところに行ってみました。
ここでも「行ってみる?」とつぶやいて、私は先に動きました。
来るかどうかは本人に任せましたが、自分の意志でやって来ました。
「~しよう」と積極的には誘いません。指示も、命令もしません。


どうやらこの辺りで、この先生はお父さんの代わりに自分のことを分かって、
相手をしてくれる人だと、安心してくれたようです。
子どもは、安心すれば、必ず自分から動くのです。

しばらく種を触って遊んだところで、「先生に見せに行こうか?」と
部屋の方へ動くと、自分から歩いて来ました。
その前に担任は、最初にお父さんから離されて泣いているときに、
「待っているからね」とちゃんと声を掛けてくれていたのです。
このひと言も、ここに至るためにはとても大事な布石です。


「園長先生も靴を履き替えて、お茶を飲もうかな」とつぶやきながら
私が靴を脱ぐと、自分で靴を脱ぎ始めました。
 

私は、靴箱のシールが「おいしそうなブドウだね」と言っただけですが、
脱いだ外靴を自分の靴箱に入れて、上履きに履き替えました。


部屋に入ると、自分のリュックからタオルを出して、


タオルをかけて、手も洗って、


麦茶を注いであげると、おいしそうに飲んでくれました。


リュックと帽子をロッカーに掛けるところは教えました。
それが終わると、すぐそばあったブロックで遊び始めました。


ほんの30分ほど前には、大泣きしていたことが、うそのように
穏やかな様子で遊び始めました。もう、私の出番は終わりです。

子どもとの関わりの中で大事にしていることは、気持ちに寄り添うことです。
不安で泣いている子には、お迎えに来てくれるか心配だよねと
投げてきたボールを正面で受け止め、まっすぐに返してあげると
子どもは気持ちを受け止めてもらえたことで安心するのです。
安心すると、自分から動き出す力が湧いて出てくるのです。

今日は、いろいろな要因がうまく重なって、いい形で自分から動き出す
ことができました。
一人一人状況は違えども、どの子に対しても、幼稚園で一番大事にしたい
自分から動き出す構えは、このような日々の指導を少しずつ積み重ねていくことで
引き出し、育てていきたいと思います。